utama888の物語

ショートショート

待ち合わせ2

『息が上がらないんですね?』と並んで歩く彼女が、感嘆の目の輝きを帯同して、わたしを見上げて言った。

『え、』一瞬考えて、
『歩き、早いのかな?』と尋ねる私がいた。

 東京駅八重洲南口で待ち合わせて、有楽町で弁護士との打合せが午後からあると聞いていたので、駅を出て高速バス停の前を通り銀座方面へ高層ビルの谷間を歩いた。
鍛冶橋の交差点で右折し、東京フォーラム方面に向かって、勝手知った歩道をガードくぐり抜け、JR線路沿いの食堂街の店先を有楽町に向かって歩いていた。

 そぞろ歩きにはほどとおい、無機質に刻む二人の歩調が、音源コードで言えばCからBbに変調し、リズムがワルツに移ろうとしていた。