『こう言う時って、どうされているんですか？』と前菜として出された小籠包に舌鼓を打ったあと、その余韻を口元に讃えながら、上目遣いにわたしに視線を向けて、テーブルの向こうから同伴者が問いかけて来た。 このようなときとは、降って湧いたように急激に…

ウラジオストクに着いたのは、国内空港を出発して３時間ほど陽に向かって飛び進んだ行程後であった。フライトは羽田空港を昼過ぎに離陸後、東京湾を旋回したのち、横田空域を右旋回で高度を上げ、ウラジオストクまでの大圏コースをとるべく、日本アルプスを…

応対に出て来た店の女に案内されたのは、その店の、フロアー中ほど、柱を中心にアレンジされた４卓のテーブルのうちのひとつ、入り口側の４席の方形テーブルであった。 ひとの出入りが近すぎるかなと感じ、奥を見渡しているうちに、同伴者は鏡になった柱を背…

レナの河畔に立ち、冷たい波の彼方に続く極北の海を感じた。シベリアの大地をたゆたう大河のほとりに開けたヤクーツクの郊外、背の低い華奢な針葉樹の森を切り裂くように彼女は流れ、北極海へと続いていた。いにしえ、カタパルトと鉄器で武装した狼の群れは…

『Ｍさん、四谷の弁護士のところに出かけてます。』 『終わり聞いてないので、終了するの何時になるのか分からないんです。』有楽町へ向かう食堂街の店先を私の左手を歩く彼女が言った。私が彼女の事務所を訪ねる主目的がＭとの面会であることを前提とした、…

株主総会会場に着くと、受付で議案委任状の受け渡しを催促され、それに従って総会案内の封書の中から抜き出して手渡しした。 議案自体は前期決算報告と当期計画予算、一部規約改訂の議案で任意特定増資に関する取締役会への委任する議案であった。 総会が行…

『息が上がらないんですね？』と並んで歩く彼女が、感嘆の目の輝きを帯同して、わたしを見上げて言った。『え、』一瞬考えて、 『歩き、早いのかな？』と尋ねる私がいた。 東京駅八重洲南口で待ち合わせて、有楽町で弁護士との打合せが午後からあると聞いて…

ー 丸の内にこれから向かいますので、そのままいてくださると都合がいいです ーと返事が返って来た。株主総会が終了後、10階フロアーエレベーター内から、今から先方に向かう旨を発信した。ー 丸の内から神田経由でぶらぶらしながらそちらに向かいます ーと…