utama888の物語

ショートショート

待ち合わせ5

レナの河畔に立ち、冷たい波の彼方に続く極北の海を感じた。シベリアの大地をたゆたう大河のほとりに開けたヤクーツクの郊外、背の低い華奢な針葉樹の森を切り裂くように彼女は流れ、北極海へと続いていた。

いにしえ、カタパルトと鉄器で武装した狼の群れは、彼らが支配した帰属国へのみせしめとしてこの地を陵辱しつくし、レナの河畔、極北の地に慎ましく息づいた小国の民を投入軍の規模とその結果として得られる制圧国群への心理的抑制効果を天秤にかけ、功利な計算の下根絶やしにした。