utama888の物語

ショートショート

待ち合わせ24

 悠久の川の流れと天空の境界線が仄かに赤く染まりどこまでも続いていた。川面はさざ波で朝の気配を反射して薄紅色に染まり、黒々とした影絵の森の中へと続き、いつまでも眠りについている。

 クルーズ船、ミハイロフ・スヴェトロフ号が朝靄の中、レナ川右岸の船着き場が見渡せる、川の本流から幾分か西岸よりの深みに碇を下ろして停泊していた。22時の日没後4時間ほどして日の出となり、2時には日の出となるので、草原の生き物は活動はじめており、目覚めた森の入り口に面した水面に、白色の客船だけ依然眠りについていた。

『あなたはにほんのれきしくわしいですか?』ベッドサイドの化粧鏡に映った、女のブルーの瞳が、自らの無防備な後ろ姿を見つめるもうひとつの眼を手鏡の中に捉えて、前面の鏡面に見入った。

『詳しくはないけど、簡単な説明くらいは出来るようにはなれると思うけど?』腰の張った見事な後ろ姿を眺めながら、ロシア女の豊満な裸体に圧倒されていた。男は予想外の問い掛けに、盗み見をしていたところを母親に見咎められた、子供のような恥じらいが、顔に現れれているのではと躊躇して言い淀んだ。

 女の意図が透けて見えた。今後もパートナーとしての資質があるのかを試しているのだと理解した。